書評『SF映画で学ぶインタフェースデザイン』

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約2100字

SF映画のUIがたくさん写真で見れる本なのか? と思いカジュアルな気持ちで購入しましたが、良い意味で予想を裏切る内容でした。

SF映画で学ぶインタフェースデザイン アイデアと想像力を鍛え上げるための141のレッスン

SFは現実世界の制約から解放されて、技術的にはるかに進んだ未来の世界を描いている。 私たちは、そこからインスピレーションやアイデアを得て、想像力に磨きをかけることができる。 本書には『月世界旅行』(1902年)から『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』 (2011年)まで、 100年以上の歴史をもつSFのデザインを調査・分析した結果から抽出した、現代のデザインに生かせ る141のレッスンが収録されている。 最高のデザインをSFから学びとること、SFのデザインを仕事に生かすことを目的として、通信や学習 、医療など 人間の生活を手助けするためにSF世界ではデザインがどのように活用されているのかを読み解く。

文章のボリュームはかなり多く、詳細な解説もあって大学のテキストのような印象を受けました。 冒頭できちんと研究の目的や方法論、なぜその方法を選んだかについて説明と本書における用語の定義が述べられており、学術的な書籍となっています。

カラー図版と動画は筆者Webサイトから

本書の図版は半分以上がモノクロ印刷で、実際の動きも分かりにくいのが残念でした。著者がかなり頻繁に更新しているブログでは、実際のカラー図版や動画を豊富に見ることができます。 意外と日本のSFアニメとかも取り上げられていて、図版を見ているだけでも面白いサイトになっています。

Sci-fi interfaces | IxD Lessons from Sci-Fi

ちなみに原題はMake It Soで、『スター・トレック』の台詞から来てるそうです。意味は「やりたまえ」とか「そうしたまえ」といったニュアンスです。

STARWARSの立体映像端末から得る
インタフェースデザインの教訓

本書では具体的なSF作品の例を挙げながら色々なテーマでデザインの考察を行っていくのですが、特にスターウォーズの立体映像についてのそれは印象的なでした。

ダースベーダーの小さな立体映像を見下ろす兵士の様子が劇中で描かれています。この時、映画では描かれていないダースベーダー側の端末では、どのように兵士は表示されているのでしょうか。

もしダースベーダー側の画面で、彼が巨大な兵士の立体映像に見下ろされているとしたら、それは彼の社会的な立場として不自然に思えます。 (会議で気に入らない上司を殺害するくらいですから….)

では、ダースベーダー側でも小さい立体映像の兵士を見下ろしているのでしょう? でも、そうしたら二人の視線が合わせられなってしまいます。 視線が合わせられない映像によるコミュニケーションは通信装置として不自然です。

従って、もし立体映像による通信技術が可能になったとしたら、その機械のデザインとは、両者の視線を一致させるデザインとインタフェースが必要になるだろう…. そんな理論でした。

本書では、このように一見荒唐無稽とも見える映画内の演出から、実際に役立ちそうな教訓を導き出しています。 テーマは、コミュニケーション端末/コンピューターのGUI/ジェスチャーによる操作/音声操作/脳インタフェース/拡張現実/医療/教育/セックスにも及び、大変興味深い内容でしたしました。

ユーザーインタフェースと人間の社会性

上記の例にあるように、ユーザーインタフェースには人間の社会性を尊重したデザインが重要だということが、全体を通してよく注意されている理念に思えました。

特にWebデザインやプロダクトデザインなど、ユーザーインタフェースに関心のある方にとってはとても興味ある内容だと思います。文字ビッシリでページ数も多いですが、すばらしい内容でした。

仮想現実における
ユーザーインタフェースデザインの可能性

最近はVR技術の発展が早く、Web業界にいた人間がいずれはそういった分野のデザインやコンテンツ制作に進んでいくということも十分考えられることです。

僕は、今私達がPCやスマホで仕事をするのと同じ感覚で、VRデバイスを使って仕事やコミュニケーションをする未来が数年以内にやってくることを期待しています。

VRの中では何でもCGで表現できてしまうので、その中で使う何かのアプリケーションのユーザーインタフェースとは、 (まさに本書の内容と同じように)SF的なアイデアが実際の道具としてデザインされ直すことになるはずです。

既に、VR空間自体をVR空間でレイアウトする為のアプリケーションのデモが存在しています。

もちろんVRに限らず、ウェアラブルデバイス・IoT・AR技術・pepperのような人型ロボットなどでしか実現できない、 未来のサービス体験や、アプリケーションのデザインにも役立つ視点だと思います。

※本レビュー記事は、筆者が2014年12月14日にAamazon.co.jpへ投稿したカスタマーレビューを元に加筆・修正したものです。