Omada ER7212PCで自宅のネットワークを中小企業並にする

ブログ
Omada
約9900字

自宅でWi-Fi接続している機器が50台近くになり、一般家庭向けの無線ルータではパフォーマンスに問題が起きはじめた。いくつか製品を比較した結果、OmadaというTP-Linkの業務用製品ラインがよさそうだったので、比較的手頃なER7212PCを中心に自宅ネットワークをリプレースした。 Omadaに関する日本語の記事はほぼ存在しなかったが、GUIが充実しているため、初心者でも十分「中小企業並」のネットワーク設計を体験できる構成が実現できた。

なお、「中小企業並」とは、以下の要素に基く:

  • 業務用ルータの導入
  • 複数アクセスポイントの帯域分離と設置場所の最適化
  • 用途・セキュリティ要件別にL2/L3を分離したVLAN構成での端末群管理

Omadaコントローラでのトポロジー画面

移行前のLANの構成

  • プロバイダ
    • NURO光 - 下り 750Mbps 上り 350Mbps程度は出ている
  • ルータ
    • NUROの制約上2重ルータ構成
    • F660A (NURO光のダメダメなONU)
      • TP-Link AX10 - ローエンド機器。F660AからDMZとして構成済
  • クライアント
    • 有線LANのサーバ用マシン。内部向け、外部向けのそれぞれのサービスを提供
      • LAN内向けサービス (SMB, VNC)
      • トンネリングで外からアクセスできる自分専用のWebサービス (HTTPS)
    • 有線LANのゲーミングPC。Meta Quest 3のAirLink先としても利用
    • 15台ほどの5GHz帯のPC・スマートフォン機器
    • 30台ほどの2.4GHz帯の各種スマートホーム機器
  • WLANのSSID
    • 2.4GHz向けが1つ、5GHz向けが1つの一般的な構成
  • 物理環境
    • 木造2階建ての1階に無線ルータ1台のみ。持ち家
    • 一般的な住宅街で、2.4GHzの混信はあるけど少なめ
    • 外壁が金属系で電波を遮断しやすい

やってみたかったこと

  • 接続台数が多すぎるせいで、IoT製品がときどきオフラインになるなど動作が不安定なのを改善したい
  • 自宅の外壁に設置したSwitchBot屋外カメラGoogleドアベルの応答が遅いときがあり改善したい
  • 業務用製品を使ってみることでネットワークインフラの設計や管理の知見を深めたい

製品の選定

予算6万円程度で検討した結果、Omadaの統合型ルータとアクセスポイントの構成を採用することにした。もともと使っていたTP-Link AX-10が使いやすかったことや価格の関係から、自然とTP-Link系のOmadaに行き着いた。

  • A案:家庭用のハイエンド製品
    • → Wi-Fi7などのスピードをフィーチャーした製品が多いが、自宅のLANでネックになっている同時接続数への対応が明言されていなかったりすることが微妙で不採用
  • B案:UniFi製品の検討
    • → インフラに詳しい同僚からの評価が高くデザインもスタイリッシュだが、初心者にはオーバースペック気味で価格も高く不採用
  • C案:Omadaの製品群からルータ・コントローラ・APを個別に選択
    • ルータ ER7206 実売2万円程度
    • コントローラ OC-200 実売2万円程度
    • PoEスイッチ ES205GP 実売1.5万円程度
    • アクセスポイント EAP653 実売2.5万円程度
    • それぞれの機器用にコンセントが必要なことや、やや予算超過気味なため不採用
    • コンポーネントごとに置き換えできる拡張性の高さは魅力ではあるが、そもそも過剰投資気味
  • D案:Omadaの統合型ルータ+APを選択
    • 統合型ルータ ER7212PC 実売3〜4万円程度
    • アクセスポイント EAP653 実売2.5万円程度
    • 3〜4万円程度の統合型ルータでPoEスイッチ・コントロータ・ルータが全部揃うハイコスパ。CPU⁄メモリもそこそこなため採用
    • → LAN/WANが1ギガビットまでの制約があり、NUROの2.5G回線に対応しきれない。ただ、現状は速度よりもLANの安定性の方が課題なのでトレードオフとして甘受
    • → 一体型故、いつか新製品が出るまでアクセスポイント以外の拡張性は犠牲になるが甘受

Omadaの製品ラインアップについて

  • ルータ
    • → NAT, DHCP, DNSなどをLANに提供する中枢機器。一部の例外的な製品を除いて無線LAN機能は無い
  • PoEスイッチ
    • → イーサネットのスイッチングハブであると共に、PoEというイーサネットを電源コードとしても使えるようにするための機材。PoE対応だとアクセスポイントがイーサネット一本で設置できるので超便利
  • アクセスポイント
    • → 業務用製品は家庭用とは違い、ルータとWi-Fiのハードウェアが分かれている。アクセスポイントはLANに無線接続できる入口を提供するハードウェア
  • コントローラ
    • → 各種製品を統合運用する管理アプリケーションを使うためのハードウェア。これがなくても機器を個別に手動設定はできるが、Omadaで揃えるならコントローラも導入したい
    • なお、ソフトウェア部分はOSSなのでその気になれば自分でコンローラに相当するサーバを立てることも可能
  • 統合型ルータ
    • → ルータ/PoEスイッチ/コントローラが合体した機材。これ1つでアクセスポイント以外の要素を一台でまかなえる。現状、ER7212PCの一機種しかラインアップにない

購入した機材

最終的にこの3つのOmada製品を導入した。

ER7212PC

ER7212PCの外箱の写真

Omadaで現状唯一の統合型ルータで、おそらく小規模な事業所などを想定したオールインワン機材。今回の家庭での導入にも身の丈にあっている。

EAP653

EAP653の外箱の写真

Wi-Fi6対応の天井据え付け用のアクセスポイントで、2.4GHz、5GHz対応。6GHzのWi-Fi6Eには未対応。また、ギガビットイーサにまでしか対応していないので、5GHz帯の160MHz通信では有線部分の速度がボトルネックになるので注意。

たまたまAmazonで安く入手できそうだったことと、Wi-Fi6系のアクセスポイントの中では性能的に一番良い機種だったので購入。

EAP225-Outdoor

EAP653の外箱の写真

Wi-Fi5対応の屋内/屋外両対応のアクセスポイントで、2.4GHz、5GHz対応。Wi-Fi5までなのでWPA3が使えなかったり、ビームフォーミングが弱いなど旧型。メルカリで安売りされていたことと、2.4GHz帯のアンテナを屋外のカメラにできるだけ近づけたかったので購入。

屋外対応ではあるが、自宅にはそもそも屋外にイーサネットを伸ばせるような開口部がないので屋内で運用。

その他購入品

EAPの技適対応について

技適マークの書かれたシールの写真

一見、パッケージに技適マークがないため怪しいが、日本語サポートのシールが貼られている。 開封すると技適のシールが付属しているので問題なし。

アクセスポイント設置場所の検討

これまでWi-Fiルータを床置きで使っていたが、Omadaにするとルータとアクセスポイントが分離される。そのため、アクセスポイントは電波発信源としてより適した場所に設置できる。

ただ、自宅の物理的な制約もあることや、一度設置すると動かしにくかったり、建材に穴を開ける必要が出てくるため慎重に検討した。

Omadaの製品紹介サイトを見るとEAP653のような皿型のアクセスポインの設置例として天井や壁に据え付ける写真が描かれている。付属品とし木ネジや金属マウントがついてきたが、これを使って自宅に据え付けるのはかなりリスキーだと感じた。

  • 設置した場所が本当に電波の通りやすい場所なのか、運用してみるまで不明
  • 開けた穴が後継製品のマウントにも適合するのかどうかが不明
  • 素人施工による落下の危険性

結局、自宅の天井裏へ下向きに置くことで様子を見ることにした。天井裏へ配線をできる物理的な余地があったこと、居室の美観を損ねないこと、再配置が容易なこと、家に穴を開けずに済むことなどが理由だ。

ヒートマップ

Omadaコントローラにヒートマップの機能があるので1階の図面を元に2.4GHzと5GHzのシミュレーションをそれぞれ作成した。

2.4GHz用のEAP225はなるべく外周寄りに設置

2.4GHz帯のヒートマップ

5GHz用のEAP653は中央部に設置

5GHz帯のヒートマップ

VLANとSSIDの設計と移行

これまでは40台以上のクライアントが1つのサブネットにぶら下がっていたため、用途別にVLAN/サブネットの切り分けをしつつ、従来のSSID構成から最低限の手順で移行できる設計にした。

VLAN/SSID対応表

ChatGPTの支援のもと、自宅内のクライアント種類を見渡して通信の性質が異なる機器群を棚卸し。 それらを「セキュリティ」「帯域の優先度」「発信・受信の役割」によって分類し、 VLANごとに隔離・最適化することにした。

移行前/後 サブネット - - - 192.168.0.1⁄24 192.168.0.1⁄24 -
移行前 SSID名 - - - WLAN 5G WLAN -
用途 - - - 5GHz機器用 2.4GHz機器用 -
帯域 - - - 5GHz 2.4GHz -
帯域幅 - - - 80MHz 20MHz -
セキュリティ - - - WPA/WPA2(AES) WPA/WPA2(AES) -
移行後 サブネット 192.168.10.1/24 192.168.15.1/24 192.168.20.1/24 192.168.30.1/24 192.168.40.1/24 192.168.45.1/24
VLAN VLAN10 VLAN15 VLAN20 VLAN30 VLAN40 VLAN45
VLAN用途 サーバ用 リモートワーク用PCを隔離 ゲーミングPC、Echo Show 15、Meta Quest、PlayStaion 4などのメディア端末 PC/スマートフォンなどの一般的な端末 ECHONETLite、Matter、その他家電などIoT機器 Google Nestドアベル、SwitchBot屋外カメラなどのカメラ機器
SSID名 (有線のみ) WLAN-NET-15 WLAN-NET-20 WLAN 5G WLAN WLAN-NET-45
帯域 - 5GHz 5GHz 5GHz 2.4GHz/5GHz 2.4GHz
帯域幅 - 160MHz 160MHz 160MHz 20MHz/160MHz 20MHz
セキュリティ - WPA3 WPA3 WPA3 WPA/WPA2(AES) WPA/WPA2(AES)
  • 自宅LANのおおまかなクライアント用途にあわせて5つのVLANを定義
    • サーバとリモートワーク用PCは単独のVLANに隔離し、他の機器とのアクセスを制御
    • 動画視聴やゲームなどに特化した機器はメディア端末用VLANに整理
    • IoT機器を独自のVLANに隔離
    • IoT機器の中でも通信量が多いカメラ付きのデバイスは専用のVLANに整理
  • もともとあるSSIDのWLANWLAN 5Gは、SSID名とパスワードを据置きでそのまま移行
    • 30台のIoT機器を全部再設定するのが大変なため

VLAN間のmDNSブロードキャストの中継

同一ネットワーク内ならmacOSの「画面共有」や「ファイル共有」は、LAN内の別の端末からもBonjourという仕組みで自動検出できる。この仕組みのことを「mDNS(マルチキャストDNS)」と言うが、VLANが分かれると、他のVLANにある機器が発信するmDNSを検出できなくなってしまう。

  • VLAN30にいるMacBookから、VLAN10のサーバのファイル共有を検出できない
  • VLAN20にいるMeta Questから、他のVLANにあるPCの画面共有を検出できない
  • VLAN40にいるLaMetricを、VLAN30にいるスマートフォンのアプリから検出できない

これを回避するために「mDNSリピータ」という機能がある。これを使うと、VLANからVLANへmDNSブロードキャストを中継できる。

OmadaにはデフォルトでAirPlayやSMBなどいくつかmDNSのサービス名が登録済だが、これでは不十分なので手動で追加した。

  • Apple系サービス - 画面共有などの検出に使われている
    • _rfb._tcp.local
    • _asquic._udp.local (Steam Linkにも使われている?)
    • _companion-link._tcp.local
  • Oculus AirLink系サービス
    • _oculusal._tcp.local
    • _oculusal_sp._tcp.local
    • _oculusal_sp_v2._tcp.local
  • Philips Hue系サービス
    • _hue._tcp.local
    • _huesync._tcp.local
    • _hap._tcp.local (HomeKit)

ほとんどのIoT機器はVLAN分離下でも問題なし

SwitchBot, Nature, Kasa, Tuya, Meross, Panasonic, iRobot, Google Nestなどの機器を運用しているが、ほとんどのサービスはインターネット経由でデバイスに接続するため、実際のところVLANが分かれていて困るケースは少ない。

ただし、一部の機器は初期セットアップのときに同一ネットワークで構成する必要がある。そういった機器は初期設定時にだけIoT用のSSIDにスマートフォンを繋げば問題ない。

OmadaのmDNSサービスは追加登録できる数がそれほど多くないため、完璧にリピータを構成するよりも割り切った方が運用が楽に感じた。また、mDNSに強く依存するサービスがあるときは、そもそも使いたい機器同士が同じVLANになるように構成した方が良い。

同じVLANに分けた機器の例

  • Meta QuestとゲーミングPC: AirLinkのVLANまたぎが面倒そうなので同一VLANに構成
  • ECHONET Lite機器: Nature Remo Eと太陽光・エコキュートのような機器は同一VLANに構成
  • Wake-On-LANの送信元と受信先: 仕組み的にL2依存なので分離不可

mDNSサービス名の調べ方

GitHubにあるmdns-browserを使うと、同一ネットワーク内のブロードキャストサービスを検索できるので、検出できないサービスがあるときにこれで調べると便利だった。

VLAN間ACL

VLANを分けるとブロードキャストは届かなくなるが、IPアドレスが分かっていればVLANをまたいでも通信自体は可能。ただ、せっかくVLANを分けたのでACLをなるべく厳しめに設定した方がセキュリティが向上する。

たとえば、中国製のよくわからない脆弱なIoT機器が侵害されたとして、通信がVLAN40に隔離されていればVLAN10のサーバへのアクセスはできなくなる。

デフォルトの設定ではVLAN間で自由に通信できてしまうので、LAN間の通信はできる範囲で制限を加えた。

ER7212PC内蔵Omadaコントローラの使い方のポイント

起動がとても遅いのが「仕様」

ER7212PCの起動/再起動はとにかく遅い。内蔵のLinuxが起動してWebアクセスが可能になるまで体感で5分以上、10分未満程度の時間がかかる。これは海外フォーラムでも指摘されている「仕様」らしく、現状は甘んじるしかない。ただ、本当に再起動が必要なシーンは本体ファームウェアの更新くらいだ。

HTTPSアクセスで警告が出るのが「仕様」

ER7212PCのOmadaコントローラは標準でhttps://192.168.0.1がWebコンソールのURLとなっており、当然HTTPSの証明書警告が出る。この警告は無視して入るしかないので面喰らわないように注意。

ヘルプが充実

Omadaコントローラのヘルプ画面

Omadaはネットワーク専門ではないユーザーを対象としたGUIになっており、細かいヘルプが日本語訳も含めてかなり充実している。このヘルプとChatGPTのサポート、IPv4の初歩的な知識があればそこまで迷うことなく構成できる。

グローバル設定とサイト設定

Omadaコントローラは複数拠点の構成に対応しており、拠点のことをOmadaでは「サイト」と言う。ログイン直後は「グローバル」設定の画面になっている。初期セットアップ時に最初の「サイト」を作っているはずなので、具体的なネットワークの設定をするには右上のプルダウンメニューから移動すること。

なお、TP-Link IDの連携など、いくつかの設定はグローバルレベルでしか設定できない。

クラウドアクセスとモバイルアプリが便利

グローバル設定でTP-Link IDの連携を設定すれば、統合型ルータのWebコンソールにクラウド経由でアクセスできるようになる。

また、モバイルアプリもありiOS/Androidからルータの設定にアクセスできる。モバイルアプリはフル機能の8割くらいに機能が限定されているが、まあまあ便利なので使っている。モバイルアプリはLAN内にコントローラがあれば検出してくれるし、TP-Link IDが連携済ならクラウドからもアクセスできる。

VLANの作成と物理ポート/SSIDへの割り当て方法

VLANの作成は「VLAN」ではなく「インターフェイス」で

作ったばかりのサイトには「Default」という命名のネットワークしかないので、サイトの設定メニューから「有線ネットワーク > LAN > 新しいLANを作成」ボタンをクリックして新規ネットワークを作る。

このとき、ラジオボタンで「インターフェイス」と「VLAN」を選べるが、「VLAN」の方はL2ネットワークしか作らないので、通常は「インターフェイス」を選んでL2と共にL3のサブネットも構成すること。

(下図)「目的」が「VLAN」だとL3の構成ができない。「インターフェイス」だとL3とセットで構成できる。

OmadaコントローラーでのVLAN設定のスクリーンショット1

VLAN30の設定例

OmadaコントローラーでのVLAN設定のスクリーンショット2

  • 「VLAN」には適当な数値(VLAN ID)を入れる
  • 「ゲートウェイ/サブネット」にはこのVLAN用のサブネットを設定する。通常は192.168.??.1/24と設定し??部を適当な識別しやすいアドレスにする
  • 「LANインターフェイス」ではER7212PCの各ポートがチェックボックスで並んでいる。全部チェックしておいて構わないが、この設定だけではまだ各ポートとVLANのマッピングは構成できていないので注意
  • 「DNSサーバ」を「手動」にするとVLANごとに独自のDNを構成できて地味に便利。たとえば家族用のVLANにはフィッシングサイトフィルタリング済のDNSを設定するなど

物理ポートへのVLAN割り当てはポートの「PVID」から

前述の設定だけではまだポートとVLANへのマッピングはできていないので追加の設定が要る。

まず、「デバイス > ER7212PC > ポート > 設定したいポートの編集ボタン」をクリックする。

OmadaコントローラーでのVLAN設定のスクリーンショット3

そうすると「PVID」からVLAN IDを選べるので、このポートにマッピングしたいVLAN IDを選んで「適用」ボタンを押す。

OmadaコントローラーでのVLAN設定のスクリーンショット4

「スイッチの設定」からはマッピングできない

雰囲気的に「スイッチの設定」からポートとVLANのマッピングができそうな雰囲気だが、ER7212PCの本体ポートはスイッチではなくゲートウェイ扱いなので、ここから設定はできない。分かりにくい。

OmadaコントローラーでのVLAN設定のスクリーンショット5

SSIDへのVLAN割り当ては「WLAN」から

「設定 > ワイヤレスネットワーク > WLAN」から構成したいSSIDを選んだら、「VLAN」を「カスタム」、「VLANの追加」から作成済のネットワーク名を選んで「適用」を押す。こうすると、そのSSIDに接続したクライアントはそのVLANのサブネットでIPがふられるようになる。

OmadaコントローラーでのVLAN設定のスクリーンショット6

EAPごとの無線帯域の構成

デフォルトではサイト内の全てのアクセスポイントで2.4GHz/5Ghzが構成される。個別のアクセスポイントごとに帯域を構成したいときは各アクセスポイントの設定から行う。

今回はEAP653を5GHz専用、EAP225を2.4GHz専用にしたかったので、下図のチェッボックスで帯域ごとに停波を設定している。

Omadaコントローラーでの無線LAN設定のスクリーンショット

mDNSリピータの設定

「設定 > サービス > mDNS > 新しいルールを作成」ボタンからルールを追加できる。

OmadaコントローラーでのmDNS設定のスクリーンショット

「デバイスの種類」は有線ネットワークも含めたいので「ゲートウェイ」を選択。「Bonjourサービス」には中継したいサービスを選ぶ。「サービスネットワーク」にはmDNSの発信元となるネットワークを選択し、「クライアントネットワーク」にはmDNSの中継先となるネットワークを選んで「適用」を押す。

デフォルトのBonjourサービスで足りないときは「Bonjourサービスの管理」から任意のmDNSサービス名を追加できる。

ただし、合計で15個までしかサービス名を追加できないという仕様があり、上限を越えると「カスタムBonjourサービスの数が上限に達しました。」というメッセージを表示して打ち止めになってしまう。mDNSの中継はよく厳選するか、専用のmDNSリピータのサーバを立てるなどの代替策が必要かもしれない。

UPnPの設定

オンラインゲームなどでポートを開く必要がある場合などに向け、ネットワーク単位でUPnPの許可を設定できる。

OmadaコントローラーでのUPnP設定のスクリーンショット

VLAN間のACLの設定

「設定 > セキュリティ > ACL」からVLAN間のアクセスコントロールを追加できる。デフォルトでは全部許可されてしまうので、図のように全プロトコルの通信をDENYするルールをネットワークごとに追加している。

OmadaコントローラーでのACL設定のスクリーンショット1

これだけだと、たとえばVLAN30からVLAN10の画面共有やSMBにアクセスできないので、DENYよりも高い優先度で許可ルールを構成する。

OmadaコントローラーでのACL設定のスクリーンショット2

本当はプロトコル粒度ではなくIP/ポート単位でもっと厳格に指定したいが、今のところLAN間通信でその粒度のACLはできないようだ。

固定IPの設定

「デバイス > 設定したいクライアント > 設定」から固定IPを付与できる。

Omadaコントローラーでの固定IP設定のスクリーンショット

ログ履歴の保存設定

デフォルトではログの履歴が保存されない。接続履歴を保持したい場合はコントローラの設定で有効化が必要になる。「グローバルビュー > 設定 > コントローラー設定 > クライアントの履歴データ」を有効化して保存期間を設定してから「保存」をクリックする。

Omadaコントローラーでのログ履歴設定のスクリーンショット

バックアップ/自動バックアップの設定

「グローバルビュー > 設定 > メンテナンス」から、設定のバックアップや書き戻しができる。定期的にリモートのファイルサーバへ設定を自動バックアップする機能もある。対応プロトコルはFTP, TFTP, SFTP, SCP。

Omada全体がIPv6対応の過渡期

最近のプロバイダでよく使われているIPoEやMAP-EなどのIPv6には未対応だ。つい最近ER8411・ER7206・ER706Wに対応したファームウェアが公開されたが、ER7212PCにはまだ提供されていない。

ER7212PCへファームウェアが今後提供されるかは不透明。これらのIPv6方式のISPの場合、WANとの間に一台ルータを噛ますのが当面の運用になるかもしれない。

「緊急フリーWi-Fiサービス」ボタン

サイトを表示中はツールバへ常に「緊急フリーWi-Fiサービス」というボタンがある。これは災害時に公衆Wi-Fiを無料公開するための機能で、一般家庭においては無用の長物だ。

「緊急フリーWi-Fiサービス」ボタンを押したときのダイアログ

間違えて押したくないのでボタンを隠したいが、そのような設定は現状見つからなかった。

Omadaに移行した所感

良かったこと

  • コンパクトな筐体へ全部入りなのが家庭用として嬉しい
  • 電源不要で配線できるPoEが超便利
  • L2/L3を分離した「準企業レベル」のネットワーク設計を体験できた
  • 懸念だった同時接続数による不安定さが大幅に改善。IoT機器の不安定さはなくなった
  • GUIとヘルプが充実していて設定難易度は低め。ネットワーク初心者でもいける
  • モバイルアプリが使いやすい

やや期待外れだったこと

  • 思ったよりログが出てこない。通信先のIPが追えたりパケットキャプチャとかできるのかと思っていたが、そんな機能はなかった
  • 統合型として色々入っているせいか、OmadaコントローラのWeb GUIはややモッサリ。再起動も遅すぎる
  • mDNSのカスタムサービス名が15個までなのは少なすぎ
  • プロトコル単位でしかLAN間通信のACLを設定できず、大味すぎて不満
  • 今のISPでは関係ないとはいえ、IPv6対応が弱い
  • 「緊急フリーWi-FIサービス」ボタンが邪魔

今後やってみたいこと

  • SNMPというプロトコルに対応しているので、LibreNMSなどで監視を構成してみたい
  • ISPの帯域を全然使いきっていないが、QoSとかも設定してみたい

※投稿内容は私個人の意見であり、所属企業・部門見解を代表するものではありません。